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今やほとんどの企業がパソコンを使う時代。それも複数台をインターネットに接続して使うような環境ではイーサネット接続が多く利用され、その中でHUB(ハブ)は重要な存在になっています。このHUBとイーサネットはどんな関係があるのでしょう?

そもそもイーサネットとは?

パソコンやゲーム機といったデバイスをケーブルを使ってインターネットに接続する通信規格のひとつです。現在はWi-Fiによる無線通信がスマホやタブレットなどの利用で急速に増えていますが、イーサネットで有線接続をするケースもまだまだ多く利用されています。

イーサネットの種類

イーサネットを使ってパソコンをインターネットに接続する際にLANケーブルを使うため、「イーサネット=LANケーブル」と思われがちですが、イーサネットの種類は利用する回線によって主に3つの種類があります。

・光ファイバー

いわゆる「光回線」で使用されるもので、大容量のデータを高速で送受信できます。ケーブルの距離で信号が弱くなるというデメリットがなく、安定した通信ができるのが強みです。

・LANケーブル

パソコンやゲーム機などのデバイスをイーサネットに接続するケーブルです。この他にも、集合住宅の各部屋に通信を提供するために使われることもあります。集合住宅では1本の光ファイバーを各部屋に分配して共有することが多く、各部屋への分配にLANケーブルを使う回線方式をLAN配線方式と呼びます。1本の光ファイバーをLANケーブルで分配することで、インターネット料金が安くなる一方で、最大通信速度が下がってしまうというデメリットがあります。

・同軸ケーブル

テレビ(受像機)をアンテナと接続したり、ケーブルテレビで映像の信号を提供をするために利用されるケーブルです。特にケーブルテレビでは同軸ケーブルを使ったインターネット通信サービスの提供も行われています。同軸ケーブルを使って宅内までインターネットをつなぎ、パソコンなどのデバイスへの有線接続にはLANケーブルが使われることが多いです。

イーサネットの規格

規格によって最大通信速度が変わるため、利用するサービスの通信速度に合わせてイーサネットを選ぶことが重要です。

規格最大通信速度伝送媒体
10BASE5、10BASE210Mbps同軸ケーブル
1000BASE-LX1000Mbps光ファイバー
10GBSE-LX10Gbps光ファイバー
100BASE-TX100MbpsLANケーブル
1000BASE-T1000MbpsLANケーブル
10GBASE-T10GbpsLANケーブル
※上記以外にも規格があります。

また、デバイスや通信機器がどの規格に対応しているかは、搭載されたLANポートの規格によって異なり、これにより最大通信速度が変わります。LANポートの規格は3つあります。

LANポートの規格最大通信速度
1000BASE-T1000Mbps(1Gbps)
100BASE-T100Mbps
10BASE-T10Mbps

例えば、最大通信速度1Gbpsの光回線を利用している場合は、1000BASE-T以上のイーサネットとLANポート規格があるデバイスやルーターを利用することで、通信速度を最大限に発揮することができるということです。

HUBって何?

HUB(ハブ)はもともと車輪やプロペラなどの中心にある部品や構造のことですが、そこから、中心地、結節点、集線装置などの意味で用いられています。ITの分野では、機器間をケーブルでつないで通信する際、複数のケーブルを接続して相互に通信できるようにする中継、もしくは集線のための装置です。イーサネット、トークンリング、FDDIなど、様々なネットワーク規格で使用する機器ですが、ネットワーク分野でのHUBと言うと、イーサネットで使われる集線装置を指します。

HUBの種類

HUBには、大別して「リピーターHUB」と「スイッチングHUB」の2種類があります。

・リピーターHUB

ある端末から発信されたデータを全ての端末に送信(ブロードキャスト)する単純な構造になっています。そのため、複数の端末から通信が集中すると、電気信号同士の衝突(コリジョン)が発生しやすくなります。その結果ネットワークに無駄な負荷がかかって通信速度を低下させるという難点があります。また、ある端末宛てのデータが関係ないコンピューターでも受信できてしまうことから、セキュリティ上大きな問題があります。

・スイッチングHUB

リピーターHUBの問題点を解消するため、「MACアドレス」という識別信号により端末を識別して、宛先の端末に対してのみ送受信ができるようになったのが、スイッチングHUBです。リピーターHUBよりネットワーク全体の負荷が軽減され、セキュリティ面でも安全にデータの中継が行えます。現在では市販されているHUBのほとんどがスイッチングHUBです。

HUBはネットワークを分配する機器

HUBにはLANケーブルを挿す口(LANポート)が複数あるので、HUBにより1本のLANケーブルを分配することができ、LANにつなぎたい機器を簡単に増やすことができます。HUBはLANケーブルを分配することで、ネットワークを分配することができる機器です。

・カスケード接続

HUBの特徴として、HUBに別のHUBを接続することでさらに接続台数を増やすことができます。この接続方法をカスケード接続、もしくは多段接続と言います。例えば、12ポートのHUB 2台をカスケード接続した場合、HUB同士をケーブルで接続したポートを除けば、最大22台の端末をネットワークに接続できます。

・AUTO-MDIX対応

以前は、利用できるLANケーブルに制限がありました。

  • ハブと機器を接続:ストレートケーブル
  • カスケード接続 :クロスケーブル

AUTO-MDIX対応のHUBであれば、どの種類のLANケーブルを利用しても接続が可能になります。HUBを増設する場合でもストレートケーブルが利用できるので便利です。現在販売されているほとんどはAUTO-MDIX対応になっています。

ストレートケーブルとクロスケーブルの違い

ストレートケーブルは一般にパソコンとパソコン以外の機器(ハブやルータなど)を接続する場合に使用します。両端のコネクタはそれぞれ同じ位置のピンに同じ色の線が接続されているため、コネクタ部分を比較するとピンにつながった線の色はどちらも同じ順番で並んでいます。
クロスケーブルはパソコン同士、もしくはHUB同士を他の機器を介さず直接接続する場合に使用します。両端のコネクタはそれぞれのピンに線が交差している状態で接続されているため、コネクタ部分を比較するとピンにつながった線の色の並び順は異なっています。

・ループに注意

「ループ」とは、同じHUBのLANポート同士をLANケーブルで接続することで、広い範囲でネットワークが停止してしまう障害に陥る危険があります。ちょっとした接続ミスで甚大な被害が出てしまうため、留意しておく必要があります。

HUBの性能

HUBには主に100BASEと1000BASEに対応した機種があり、それぞれ転送速度が100Mbpsと1000Mbpsに対応しているということです。転送速度が速い機種の方が価格も高くなります。

目安としては、ExcelやWordのファイルをコピーする程度であれば100BASE対応の機種でもいいのですが、最近はインターネットの転送速度でも100Mbpsを超えることがある上、動画ファイルや音楽ファイルを扱うことが多くなってきていることから、100BASEでは対応しきれなくなってきており、1000BASE対応が標準になりつつあります。

HUBとイーサネットの関係は?

HUBでLANケーブルの距離を伸ばせる

HUBにはLANケーブルの分配以外に、LANケーブルの距離を伸ばせるというメリットもあります。LANケーブルには1本の配線距離は約100mまでという技術上の制約があります。しかしHUBを中継することで100mの制約はそこでリセットされ、そこからさらに100mまでのLAN配線が可能になります。このHUBの性質を利用すれば、長い距離でもLANで繋ぐことができます。

ただし、HUBはデータ転送を中継するだけなので、カスケード接続しすぎるとデータ信号が減衰し、データに欠損が生じる可能性が高くなってしまいます。HUBにはケーブル内での信号の減衰や波形の歪みなどの影響を取り除き、受信した信号を復元するリタイミング機能があります。しかし、復元するにも限界があり、劣化を止めることはできません。従って、イーサネットの規格によりカスケード接続の段数に以下のような制限が設けられています。

  • 10BASE-T:最大4段まで
  • 100BASE-TX:最大2段まで

HUBで異なる規格のネットワークを中継できる

HUBは電気信号をただ中継するのではなくデータを蓄えて送信するため、10BASE-T(10Mbps)と100BASE-TX(100Mbps)、100BASE-TXと1000BASE-T(1Gbps)など、通信速度の異なるイーサネット規格の機器やネットワーク間を中継できるというメリットもあります。

注意点は?

・性能と規格が合わなければ最大通信速度は発揮できない

HUBが1000BASE対応の機種であっても、イーサネットの規格が100Mbpsにしか対応していなければ、そのHUBが持っている性能は発揮できません。逆にイーサネットが1000Mbpsに対応した構成になっていても、中継するHUBが100BASE対応の機種であれば、1000Mbpsの転送速度は出せません。

・HUBの台数が増えるほど故障率も上がる

HUBを置くほどそれだけ機器の数も増えます。その分どうしてもネットワークの故障率は上がってしまいます。また、上流の箇所でHUB自体が故障したりLANケーブルが断線すれば、その下流の機器はすべて繋がらなくなってしまいます。HUBを使用して分岐構造にする以上、そのリスクをなくすのは困難です。

この対策として、ネットワーク構成図を作成しておくことがポイントです。もし異常があった時でも影響範囲を確認したり障害箇所を特定することができ、すぐに対処することができます。また、HUBの性能やLANケーブルの規格も併せて記載しておくことで、最大通信速度が発揮できる構成になっているかどうかも把握することができます。

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HUBでネットワークを簡単に拡張できるのは便利ですが、ちょっとした配線ミスでネットワーク障害が発生したり、性能が発揮できない構成になっていた!という事態を避けるためにも、ネットワーク構成図を作成して管理するのがオススメです。

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LANケーブルのカテゴリとは?

LANには有線と無線があり、有線LANはケーブルを使って機器を接続するもので、無線に比べてセキュリティが高いのが特徴です。使用されるケーブルのうちパソコンのネットワーク接続でよく使用されるのが、LANケーブルです。LANケーブルはカテゴリと呼ばれる規格に分かれており、通信速度・伝送帯域が異なります。