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スマートフォンやパソコンなどはIPアドレスが割り当てられていないと、インターネットに接続してもメールの送受信やWEBページとのデータのやり取りはできません。このIPアドレスとは何でしょう?またIPアドレスのリースとは?

IPアドレスとは?

IPアドレスの「IP」とは「Internet Protocol」の略で、インターネット上でデータ通信を行うために定められた規約という意味です。パソコンやスマートフォン、タブレット、ゲーム機、テレビ、サーバ、ルーターなど、インターネットに接続する機器は、1台毎に識別する番号が必要になります。その番号がIPアドレスで、インターネット上の住所のようなものです。例えば、「123.456.789.0」といった形で表記されます。

インターネットを利用するためには、アクセスポイント(基地局)を介してインターネット回線(光回線、ADSL回線、ケーブルテレビ回線など)に接続する必要があります。そのアクセスポイントを提供しているのがインターネットサービスプロバイダー(Internet Service Provider 略してISP)です。IPアドレスは、このISPから割り振られます。

ISPは回線事業者が提供する回線上でインターネット接続のサービスを提供します。なお、携帯電話やモバイルWi-Fiルーター、ケーブルテレビなどのサービスを提供する事業者の中には、回線事業者とISPを一体化してサービスを提供している事業者もあります。

IPアドレスの種類

グローバルIPアドレス

グローバルIPアドレス(パブリックIPアドレスとも言います)は世界で唯一のIPアドレスです。ICANNで重複しないよう管理されています。日本で利用するグローバルIPアドレスはICANNからJPNICに割り振られ、そこからISPを経由して各ユーザーに割り振られています。

ICANNとJPNIC

ICANNは「The Internet Corporation for Assigned Names and Numbers」の略で、インターネットで使用されるドメイン名・IP アドレス・プロトコルなどの管理を行う非営利公益法人の国際機関。1998年10月に設立され、本部はアメリカのカリフォルニア。
JPNICは「Japan Network Information Center」の略で、日本ネットワークインフォメーションセンター。日本国内のドメイン名と IP アドレスの管理およびインターネットの資源管理を行う。1993 年(平成 5)3月の設立。

これまで使われてきたIPアドレスは、以前から枯渇することが予想されていました。そこで、IPアドレスを節約する技術が開発されます。それが、ローカルIPアドレスです。世界中でインターネットに接続する末端のパソコン全てに割り当てていたら枯渇してしまいますが、ローカルIPアドレスは、世界では重複しているIPアドレスでもプライベートなネットワーク内でなら使える技術です。

ローカルIPアドレス

ローカルIPアドレス(プライベートIPアドレスとも言います)は、一般的に家庭やオフィスのネットワーク内で利用されています。

グローバルIPアドレスとは異なり、ネットワーク内だけで端末が識別できればよいので、同じネットワーク内では重複できませんが、他のネットワークでは同じIPアドレスが使われている可能性があります。そのため、ローカルIPアドレスのまま直接インターネットに接続はできず、サーバやルーターを通してグローバルIPアドレスへ変換してインターネットに接続します。このローカルIPアドレスからグローバルIPアドレスへは、NAT(Network Address Translation)と呼ばれる仕組みで変換されます。

接続形態によって異なるIPアドレス

IPアドレスは接続形態によって、固定IPアドレスと動的IPアドレスに分けられます。

固定IPアドレス

ISPから一度割り振られたIPアドレスがずっと変わらないのが固定IPアドレスです。外部からアクセスが必要となる利用形態の場合、固定IPアドレスが必要になります。

もし住所が変わってしまうとたどり着けなくなるのと同じように、WEBサーバのIPアドレスが変わってしまうとそのWEBサーバにアクセスできなくなり、結果としてWEBサイトの閲覧ができません。また、ファイルサーバのIPアドレスが変わると、外出先からファイルサーバ内のファイルにアクセスできません。このように、コロナ禍でテレワークが普及した今、多くの企業にとって欠かせないものになっています。

固定IPアドレスの活用シーンは?

・ 機器をリモート操作できる

遠隔地からIoTなどの機器に直接接続してリモート操作を行うには、機器に固定IPアドレスを割り当てると便利です。

IoTとは?

「Internet of Things」の略で、家電やオフィス機器、建物、工場機械など今までインターネット接続されていなかったモノをネットワークに接続し、データのやりとりを行う技術。機器のセンサーが取得したデータをインターネットを介してサーバに集約し、分析した結果に基づきアクションを返す、といった分析プロセスが付加されているのが特徴。

・社外から社内システムに安全にアクセスできる

社員のパソコンに固定IPアドレスを設定して、社内システム側で特定の固定IPアドレスのみアクセスを許可する設定をすれば、ユーザーIDやパスワードでの管理に加えて、さらにセキュリティを強化できます。

・クラウドサービスへのアクセス制限が可能

クラウドサービスは業務に不可欠な存在になりつつあり、機密情報や個人情報などをクラウドに保存するケースが増加しています。そこで、インターネットに接続する際の設定に固定IPアドレスを使用してクラウドサービスへのアクセスを限定することで、セキュリティを確保できます。

・VPNが構築できる

VPN(Virtual Private Network:仮想専用線)とは、第三者がアクセスできないプライベートなネットワーク通信を仮想的に実現するものです。各拠点にVPN専用のルーターを用意して、そこに本社の固定IPアドレスを設定すると、本社と各拠点の社内LANを統合した1つのネットワークを作れます。VPNには動的IPアドレスを使用して外部からアクセスすることもできますが、送信先と受信先の双方に固定IPアドレスを設定することで、より安全な通信環境を構築できます。

固定IPアドレスを使用するデメリットは?

・運用コストの増加

固定IPアドレス(ここではグローバルIPアドレス)を取得するには回線使用料に加えて追加料金が必要となる場合があります。

・機器設定が必要

導入時に設定作業が必要となる他、機器が故障した際には再設定が必要になります。

・不正アクセスの危険性

固定IPアドレスが漏洩してしまうと不正アクセスを受ける恐れがあります。

動的IPアドレス

動的IPアドレスは固定ではなく、新たにインターネットに接続すると自動で割り振られるIPアドレスです。機器の設定や動作などの条件によってIPアドレスが変わることがあります。変わるタイミングは基本的にパソコンやルーターなどの機器を再起動してインターネットに再接続した時ですが、使用中でも切り替わることがあります。

IPアドレスが変わっても、WEBサイトを閲覧したり、メールを送受信するなどの用途には全く影響ありません。

動的IPアドレスを使用するメリットは?

・簡単なセットアップと自動設定

利用可能なIPアドレスが自動的に端末に割り当てられるため、設定は特に必要ありません。

・コストが低い

ほとんどの場合、IPアドレスの取得や変更のために料金を支払う必要はありません。

・IPアドレス間の競合や重複がない

すべての動的IPアドレスは再利用可能です。ルーターに接続すると、空いているIPアドレスが自動的に端末に割り当てられ、2つの端末が同じIPアドレスを重複して使用することを避けられます。

・端末を特定されにくい

端末が利用するIPアドレスは変化するため、攻撃や追跡する悪者から端末の識別や特定をすることが難しくなります。

動的IPアドレスを割り振る仕組み

パソコンをインターネットに接続する場合、どのIPアドレスを使って通信するのかがパソコンに設定されていなくてはなりません。動的IPアドレスが登場する前は、どのパソコンにどの固定IPアドレスを割り当てたかや、他のパソコンのIPアドレスと重複していないことを管理しながら一台ずつ設定する必要がありました。しかも、その作業を人手で行っていたので、パソコンが何百台にもなってくると膨大な作業になります。

そこで、IPアドレスを動的に割り当てる仕組みが登場します。それがDHCPの仕組みです。「Dynamic Host Configuration Protocol」の略で、日本語にすると「動的ホスト設定用のプロトコル(約束事)」になります。サーバやルーターにはDHCPの機能が備わっており、新しくインターネットに接続されたパソコンなどの端末から要求を受けると、このプロトコルに従って自動的にIPアドレスを割り当てます。

昔はパソコンを買ってくると、そのパソコンにIPアドレスを設定してインターネットに接続していました。最近は、買ってきたパソコンに何の設定をしなくても、LANケーブルを挿しただけでインターネットに接続できますよね。これはDHCPの機能を持ったサーバやルーターからIPアドレスが自動で割り当てられるからです。一般家庭や中小規模のオフィスでは、基本的にインターネット回線につないでいるルーターにDHCPの機能があり、接続されたパソコンやスマートフォン、タブレットなどに、IPアドレスを割り当てて各端末を識別しています。

DHCPによるIPアドレスのリース

この仕組みで割り当てられるIPアドレスは、恒久的なものではなく一時的に貸し出されるもので、使い終わったら回収されます。この貸し出しが「リース」です。つまり、IPアドレスのリースとは、DHCPでIPアドレスをパソコンなどの端末に一時的に割り当てることです。ちなみに、DHCP機能が備わったサーバやルーターは過去に割り当てた履歴の情報を保持していて、基本的にその履歴をもとに以前に割り当てたIPアドレスを割り当てるようになっています。

IPアドレスのリース期間

DHCPではリース期間が設定されており、この期間内だけ割り当てられたIPアドレスを使用することが許されます。リース期間内にパソコンなどの端末の電源を切ると、IPアドレスは解放されます。また、リース期間を越えても接続した状態になっている場合、その端末からDHCPに対してリース期間の延長が要求されます。

このリース期間のデフォルト(初期)値は多くの場合、24時間に設定されています。もしリース期間を無制限もしくは長時間に設定していると、一度割り当てたIPアドレスは端末の電源が入っていない状態でもその端末に占有され続けます。このため、利用できるIPアドレスの数より端末の数の方が多い状況になりやすく、こうなるとIPアドレスが不足して接続できない端末がでてしまいます。そこで、適切なリース期間を設定するのがポイントです。

DHCPのメリットとデメリット

DHCPのメリットとしては、IPアドレスの設定や管理が圧倒的に楽なことです。

一方デメリットは、DHCPが備わったサーバやルーターが稼働していないとインターネットに接続できないことと、IPアドレスが変わる可能性があることです。

ドメインとIPアドレスの関係は?

IPアドレスは数字の羅列で表記されるので覚えにくく、WEBサイトのURLやメールアドレスとして扱うには不向きです。そこで、ドメイン(ホスト名)が使われます。 例えば、メールアドレス「aaa@example.jp」なら「example.jp」の部分、URL「https://www.example.co.jp/」なら「example.co.jp」の部分がドメイン名です。末尾が「.jp」となっているものは「JPドメイン名」と呼ばれ、日本におけるドメイン名です。ドメイン名は、他に使われていなければ自分の好きなドメイン名を登録して利用することができます。

ドメインとIPアドレスは結び付けられており、DNS(Domain Name System)と呼ぶ仕組みで管理されています。DNSでドメインからIPアドレスを調べることを「正引き」、その反対を「逆引き」と呼びます。

ドメインは固有の名称を使ってアドレスを作ることができるため、企業にとっては社名やブランド名を使うことで宣伝にもなり、個人にとってもインターネット上でアイデンティティを確保することができます。

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最近、これまでIPアドレスの枯渇が心配されていたIPv4に代わるIPv6が普及し始めています。専用の機器が必要になるなど、一般的に広がるにはまだ時間がかかりそうですが、無限の数のIPアドレスが生成できると言われていて、枯渇の心配はなくなりそうです。