テレワークを導入するには?

いざテレワークを導入しようとしても何をしたらいいのかがわからない、
ということはありませんか?
どんな準備をしてどんな手順で実施すればよいのか説明します。

テレワークを導入する際のプロセスはどのような流れになるのでしょうか。

  1. テレワーク導入の目的を明確にして社内に共有する
  2. 就業ルールを作る
  3. セキュリティ対策をする
  4. ICT環境を整える
  5. 実施・改善

このプロセスに沿って詳細にみていきましょう。

1.テレワーク導入の目的を明確にし、社内に共有する

テレワークを仕組みとして導入しても実際に利用してもらえなければ導入する意味がありません。社員が納得して利用できるよう導入目的を明確にし、社内に情報の共有をして同意を得たうえで進めることが重要です。

テレワークの導入を円滑に進めるためには、部署の垣根を超えて協力し合える体制をつくることも大切です。導入に合わせて業務上の変更をしなければならないことや、運営や労働に関するルール作り、セキュリティ確保のための取り決めやルールなどを作るには部門を超えて議論しなければならない内容があるからです。そして、テレワークの実施と積極的な活用を宣言して全社で取り組む姿勢を示す意味でも経営陣の役割が重要になってきます。

テレワークの導入目的は会社によってさまざまですが、社員にとってはワークライフバランスの向上や生産性の向上が実現され、会社にとっては業務改善やBCP対策などを実施できるなど、導入により社員にも会社にも双方にメリットをもたらすのがテレワークです。会社の業種や規模などを考慮してその会社に合った目的を設定することが成功のカギです。

2.就業ルールを作る

テレワークでは仕事と仕事以外との切り分けが難しく評価がしづらいことや、労働時間の管理が難しいといったことが課題になります。そこで就業ルールを作ることが重要になりますが、テレワーク用に新しく就業ルールを作るのではなく従来のルールにテレワーク勤務の規程を盛り込む形で作成している会社が多いようです。

従来の就業ルールに追加して作成するルールには以下のものが挙げられます。

・テレワークの適用範囲
・始業・終業の共有方法
・労災保険の適用
・給与・通信費用等の負担
・緊急時の連絡体制
・人事評価

人事評価の制度については、現状の制度上でテレワークで働く社員に不利益が生じないかを見直した上で、テレワークをする社員としない社員が公平に作業内容や業績について報告できるプロセスを設けるなど、対応を考えることが必要になるかもしれません。

3.セキュリティ対策をする

テレワークではデータやパソコンを社外で利用する形になるため、社内データの漏洩やコンピュータウィルスなどのリスクが高まります。特に最近テレワークの導入が急速に進む中で、セキュリティ対策の抜け道を突かれてハッキングに遭ってしまうケースも増えています。そうしたリスクに対応できるセキュリティ対策をすることが重要です。

端末はどうする?

端末の利用には2つのパターンがあります。

・会社のものを貸与する
・社員が持っている私物を利用する

会社として社員の私用端末の利用を認める、いわゆるBYOD(Bring Your Own Device)では端末にかかるコストを抑えられ、災害時等も仕事を継続できるようになります。その一方で使用するOSやソフトウェア、セキュリティソフトの導入やアップデートなどが社員それぞれに任されるため管理も難しくなります。

セキュリティ対策として行うことは?

セキュリティ対策として行うことは次のようなことがあります。

・トラブル発生時の連絡体制の整備

端末の紛失や不正アクセス、情報の盗聴などにより情報漏洩の危険が発生した場合、どのような手順でどこへ連絡するのかなどの連絡体制を整えます。

・コンピュータウイルスへの対策

ウイルス対策ソフトの導入、アプリケーションのインストール許可、OSを最新にするなど、テレワーク用の端末とテレワークを行う社員に対して対策を講じます。

・情報セキュリティポリシーの策定

上記の内容も含めて既存の情報セキュリティポリシーにテレワークにおけるポリシーの更新を行って社内に周知徹底させます。

4.ICT環境を整える

ICTの環境を整えるには端末と社内データへアクセスする方法を準備する必要があります。その主な方法として6つの方式があります。

1)リモートデスクトップ方式

総務省「テレワークセキュリティガイドライン」より

オフィスに設置されたパソコン等の端末のデスクトップ環境を、テレワーク端末から遠隔で操作したり閲覧したりする方法です。この方法では、オフィスで利用しているのと同じ環境が利用できるので、オフィスで実施していた作業をテレワーク環境でも継続して行えます。また、作業したデータはオフィス側に保存され、テレワーク端末側にデータを残さないようにすることができるため、テレワーク端末として私用の端末を使うことが可能です。ただし、テレワーク端末とオフィスを接続するインターネット回線で十分な速度が確保できなければ、操作性が低下することに留意する必要があります。

2)仮想デスクトップ方式

総務省「テレワークセキュリティガイドライン」より

オフィスのサーバ上で提供される仮想デスクトップ基盤(VDI)に、テレワーク端末から遠隔でログインして利用する方法です。テレワーク端末にデータを残さない点ではリモートデスクトップ方式と同じですが、オフィス側に端末を用意する必要がありません。仮想デスクトップの環境はシステム管理者が一括して管理することができ、均一のレベルでセキュリティ対策をすることができます。テレワーク端末とオフィスを接続するインターネット回線の速度がテレワーク端末の操作性を左右する点についても、リモートデスクトップ方式を同じです。

3)クラウド型アプリ方式

総務省「テレワークセキュリティガイドライン」より

オフィスかテレワークかに関係なく、インターネットで接続されている環境からクラウドサーバ上で提供されるアプリケーションにアクセスして作業を行う方法です。アプリケーションで作成したデータの保存先をクラウド上とローカル環境のどちらも選択でき、テレワークの利用者がテレワーク端末側に業務のデータを保存できることから、管理上の問題になり得ることを留意する必要があります。リモートデスクトップ方式や仮想デスクトップ方式と比較すると、テレワーク端末とクラウドサーバ間のインターネットの速度が作業の操作性に及ぼす影響は限定的です。

4)セキュアブラウザ方式

総務省「テレワークセキュリティガイドライン」より

クラウド型アプリ方式の安全性を高めたものです。特別なインターネットブラウザを用いることで、ファイルのダウンロードや印刷などの機能を制限します。これによりテレワーク端末に業務で利用するデータを保存しないようにすることができます。安全性が高まる反面、テレワーク端末上で利用できるアプリケーションはインターネットブラウザ経由で利用できるものに限定されます。インターネットの速度の影響に関してはクラウド型アプリ方式と変わりません。

5)アプリケーションラッピング方式

総務省「テレワークセキュリティガイドライン」より

テレワーク端末内に「コンテナ」と呼ばれる仮想的な環境を設けて、その中でテレワークで行う業務のアプリケーション(文書作成、インターネットブラウザ等)を動作させる方式です。コンテナはローカル環境から独立しており、コンテナ内で動作するアプリケーションからはローカル環境にアクセスすることができないため、テレワーク端末内にデータを残さずに利用することができます。また、コンテナ内で動作させるOSやアプリケーションはローカルPCにインストールされたものを利用するので、インターネットの速度の影響を受けにくいというメリットもあります。

6)会社PCの持ち帰り方式

総務省「テレワークセキュリティガイドライン」より

オフィスで使用している端末をテレワーク先に持ち出して作業を行う方法です。ネットワーク経由でオフィスにアクセスする必要がある場合は、インターネットの経路上での情報漏洩対策のためVPNで接続することが必要です。テレワーク環境とオフィスの間のインターネット回線の速度が操作性に影響しないため、交通機関など通信が安定しない環境でも安定した作業を行うことができます。その反面、在宅でテレワークを行うためにはオフィスから端末を持ち帰る必要があり、気象条件等によっては急なテレワークの実施ができないなど柔軟な対応が難しく、持ち帰っていなければテレワークで業務ができないという課題もあります。また、テレワーク端末にデータを保存するか電子媒体でデータを扱うことになるため、6つの方式の中では最も厳格な情報セキュリティ対策が必要になります。

以上の6つの方式から技術面や費用面を踏まえた上で自分の会社にふさわしい方式を選択することになります。

テレワークで快適に仕事をするための工夫

これで社内データにアクセスする環境は整えられますが、テレワークで快適に仕事をするためには他にも工夫が必要になります。例えば、テレワークでは離れた場所で仕事をするため社員の間でコミュニケーションをとるのが難しくなり、意思疎通ができるのかという心配の声も聞かれます。そこでICT環境として、チャットツール、テレビ会議システム等のコミュニケーションツールを必要に応じて導入することで、よりスムーズに業務を行うことができるようになります。

コミュニケーションだけでなく、経理や会計など紙の書類に対応せざるをえないことや、契約書等の押印やサインなどが必要になることなども、テレワーク導入の壁になっています。最近では、こうした業務を電子化して行えるツールも多く出てきています。そうしたICT上のツールも活用することでテレワークの導入が可能になり、テレワークの恩恵をより多く受けることができます。

5.実施・改善

テレワークを導入していきなり全面的に実施するとなると思わぬトラブルや混乱を招く心配もあります。そのようなことを避けるために、対象の部署や社員、対象の業務、実施頻度を限定して社内の現行制度やルールを維持したまま、できるところからパイロット的に導入して少しずつ対象範囲を広げていく、という方法も有効かもしれません。

実際に運用が始まれば、テレワークを適用した社員やその上司から意見を出し合って改善を進め、当初決めたテレワークの目的に近づいているかを確認しながら、就業ルールやセキュリティ対策など運用の仕方を見直しそれを繰り返します。

テレワークの導入を成功に導くには、システムや制度の導入にとどまらずテレワークで働く社員の不安や困っていることの解消をする工夫が必要です。コミュニケーションはもちろん、ペーパーレスや決済方法といった業務上の改善も同時に必要になることがあります。

規模が大きい会社ほどテレワークの導入にはたくさんの壁があり、導入そのものが目的化してしまいがちだと言われます。はじめに検討したテレワーク導入の目的を振り返り、何のために導入するのかをよく検討し、社内で周知・意識づけをすることも大切です。

テレワークを導入することは、よりよい会社を目指すことを継続的に考える仕組みづくりのきっかけになるかもしれません。
導入の際には是非Office Cloudをご検討下さい。

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