シンクライアントの歴史をみてみよう

そもそもシンクライアントとはどんなものでしょう?
いつどのようにして登場したのか、その歴史をひもといてみましょう。

1960年

シンクライアント自体はわりと古くからありました。1960年代~1980年代における「メインフレーム(汎用機)」の全盛時代に既にシンクライアントの基礎があったともいわれています。

メインフレームは、強力な処理能力を持つ汎用機に複数の専用端末(ダム端末)からアクセスする「中央集中型」の仕組みです。この専用端末は「最小限の処理能力のみを持たせる」という意味でシンクライアントの基礎と言えるかもしれません。

メインフレーム(中央集中型)のイメージ

1980年

1980年後半は商用でもインターネットが利用されはじめたこともあり、インターネットワーキング(LANなどのネットワークを拡大・拡張)がコンピュータシステムに大きな影響を与えた時代でした。

1990年

1990年代に入るとWindows OSをマルチユーザーで使用するソフトウェアが登場します。背景にはTCO(Total Cost of Ownership)の削減が求められていたことがあります。パソコンは当時高価なもので、パソコンを使用する業務システムにおいてコスト削減や業務効率化を推進することが必要になったのです。

1990年代後半には「クライアント・サーバー型」のシステムが一般的になり、社内に各種サーバーと1人1台のクライアントパソコンが配布されるようになりました。

クライアント・サーバ型のイメージ

それまで使っていた大型のコンピュータよりもかなり低価格になったものの、数が増えれば運用がそれだけ負担になります。そこで、「シンクライアント」の仕組みが注目されはじめます。

その「シンクライアント」という用語が世の中で使われるようになったのは、1996年にオラクル社が新しい端末のコンセプトデル(Network Computer)を発表したのがきっかけでした。その数か月後にはサン・マイクロシステムズ社も同様のコンセプトモデル(Java Station)を発表しています。

これらのコンセプトモデルは、最小限の機能のみを持たせた端末と、それを使うためのシステムを概念としていて、それこそが「シンクライアント」の真髄です。これらが注目を浴びたのは、当時高機能で高価だったWindowsパソコンに対して低価格だったことです。それに加え、当時のパソコンは一般的に大型だったのに対して非常にコンパクトで、デザイン的にも斬新なものであったことから大きな話題を集めました。

シンクライアントのイメージ

当時、シンクライアントは端末の価格とデザインでは注目を浴びたものの、「端末を使うためのシステム」には注目されていませんでした。それが、マイクロソフト社の参入により、シンクライアントが「端末を使うためのシステム」の面でも注目を集めるようになります。

この2社が発表したコンセプトモデルの先進性や話題性に危機感をもったマイクロソフト社は、狭義のシンクライアント(専用端末)としての製品(WindowsBasedTerminal)※Windows CEをベースとしたものと、広義のシンクライアント(システムアーキテクチャ)としての製品(WindowsNTServer4.0 TerminalServerEdition)をほぼ同時に発表しました。

TerminalServerEditionは、すでにWindowsベースのマルチユーザー&リモート操作を実現していたシトリックス・システムズ社の「Citrix WinFrame」の技術をライセンス供与されたものです。Windows2000Server以降、マルチユーザー&リモート操作を実現する「ターミナルサービス」の機能が標準で搭載されています。このシングルユーザー版が WindowsXP以降に標準搭載された「リモートデスクトップ」です。

当初は大きな注目を浴びたシンクライアントですが、シンクライアント専用端末についてみると十分には普及しませんでした。高価なパソコンに価格面で対抗できるとみられていたところにパソコン価格の急落が重なり、価格面でのメリットが発揮できなくなってしまいました。

一方、広義のシンクライアントについてみると、端末自体は既存のファットクライアント(シンクライアントの“Thin”(薄い)に対して“Fat”(厚い))を使いながら、サーバ側に処理を集約するシステムアーキテクチャが確実に普及してきていました。

この代表例が、マイクロソフト社のWindows2000Server、WindowsServer2003に実装されているターミナルサービスと、ターミナルサービスを機能拡張するシトリックス・システムズ社のMetaFrame(CitrixPresentationServer)です。

2000年

2000年代になるとセキュリティが企業の大きな課題になってきます。しばらくあまり普及しなかったシンクライアント専用端末は、この「セキュリティ」面で注目されるようになります。この頃、個人情報などの企業内で管理するデータが外部に流出する事件が発生し、その対策が企業にとって急務になっていました。パソコン側にデータが保存されている状態ではセキュリティ対策が困難ですが、端末側にデータを持たないシンクライアント専用端末の特性が、情報漏洩対策に効果があるとして期待されるようになったのです。

さらに、内部統制が企業に求められるようになると、サーバー側で集中管理する仕組みが主流になっていきます。そして、サーバー仮想化技術と物理的なハードウェアの進化によりシンクライアントに新たな流れが発生し、情報漏洩やBCP対策、コスト削減などといった様々な業務課題の解決に貢献するシステムとして導入されています。

2020年

働き方改革の推進や東京オリンピック開催によって都市部に人のアクセスが集中することへの対策から、企業に対してテレワークの推進が国から求められました。しかし、中小企業にはテレワークの導入・運用はなかなか進みませんでした。

2020年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による緊急事態宣言により、テレワークの導入が中小企業の第一課題となりました。今シンクライアントはテレワークの実現方法として一番現実的な選択肢として再注目をされています。

このように、シンクライアントは IT 技術の進歩や社会の動向を背景の流れに沿って必要な技術として進歩をとげ、さらに進化しているのです。

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